ヒカルの碁は人間ドラマの群像劇だ


どうも、みなさんこんにちは。
今回の『ヒカルの碁』について語りたいと思います。

『ヒカルの碁』は週刊少年ジャンプにて1999年から2003年にかけて連載されていた漫画で、2001年からアニメ化もされています。アニメ化と共に社会現象として日本中の子供たちが囲碁をするという囲碁ブームを引き起こしました。この作品をきっかけに囲碁のプロ棋士になった方もいます。
そんな『ヒカルの碁』ですが、「囲碁とかルール知らんし…」って敬遠しがちですが、なんとこの作品の囲碁を知らなくても楽しめる素晴らしい作品となっています。
ネタバレ有りで語っていきますのでご注意下さい!


ヒカルの碁とは何なのか

ヒカルの碁とは、タイトルの通り、実際の現代を舞台にした囲碁の漫画です。ファンタジーとかそういうものではないです。囲碁ってナニ?って方は、平たく言うと将棋やチェスや麻雀のような卓上で出来る対戦ゲームのようなものですね。囲碁のざっくりとしたルールは、黒石と白石に分かれて交互に石を置いていって陣地が広いほうが勝ちとなります。ここで1つゲームに味を持たせてあるルールが「相手の石を囲んだら取れる」です。他にもコウやコミや着手禁止箇所だったりと細かいルールはあるのですが、この囲碁の魅力さと複雑さと研究しつくせない程の無限の広さの根源は 「相手の石を囲んだら取れる」というこのルールにあると思います。単純に 囲えば良いものでもなく、盤に石を置いて地を広げようとすれば相手の石と接触していきます。そこで自分がどう上手く相手の生き石を凌いで攻め合いに勝ち地を獲得するか、そんな緻密であり感覚的でもあるゲームが囲碁なのです。
「なんかこいつめっちゃ囲碁の魅力語ってんだけどww」って思う方、そう僕は囲碁経験者なのです。小6の時に友達からネット碁やらない?って誘われて「囲碁きっず」というサイトに1、2年くらい入り浸ってました。といってもほぼチャットばかりしてましてインターネットの凄さを噛みしめて囲碁はおまけ程度で遊んでいたので、そんなに強くないです。笑
ただ、盤面見ればどういう状況なのかは分かる程度ですね。

そんな渋くて年寄りくさそうな囲碁ですが、なんで子供たちに人気に!?そして少年漫画に!?って感じですが、まず主人公の進藤ヒカルくんが前髪金髪の礼儀知らずで運動好きな頭を使うことが嫌いな小学生時代から物語が始まります。この時ヒカルは囲碁も知りませんし囲碁は年寄りがやるものだという認識です。そんなヒカルのおじいちゃんの家の蔵にある碁盤に血のような染みを見つけ、藤原佐為というめちゃくちゃ囲碁が強い平安時代の人間の幽霊に取り憑かれます。取り憑かれたといってもヒカルは佐為と会話できてヒカルにだけ佐為の姿が見えるといった状態であって、佐為がヒカルの体を乗っ取っているわけではありません。佐為もヒカルとしか会話ができず他の人や物には干渉できません。
最初は佐為が「囲碁打ちたい囲碁打ちたい」とずっと言っていて、ヒカルが仕方ないなぁって感じで佐為の指し示す場所にヒカルが石を置く形で打たせてあげていたのですが、次第にヒカルも囲碁に興味を持つようになります。佐為も囲碁の面白さを分かってもらって嬉しくなり、優しくヒカルの成長を指導しながらも見守ります。ただ、たまには自分も打ちたいと言ったり、強い人がいると私に打たせて!と駄々をこねる可愛らしさも兼ね備えた佐為なのであります。
そんな進藤ヒカルくんの成長物語となっているのが『ヒカルの碁』です。


主な物語と作品の魅力

この物語の魅力はまずなんといっても主人公成長系の物語です。あの有名な『スラムダンク』という国民的な超大人気漫画がありますが、『ヒカルの碁』はまさにそのレベルです。知名度がスラムダンクほどではないだけで、マジで普通にスラムダンク並みの面白さと共感性と成長を読者が感じられると思います。まぁスラムダンクはスラムダンク、ヒカルの碁はヒカルの碁の良さや面白さは当然あるのですが、分かり易い例えで使わせ頂きました。ちなみに僕が一番好きな漫画はスラムダンクです。

藤原佐為、塔矢アキラとの出会い

進藤ヒカルは平安時代最強の棋士(本因坊秀策)、藤原佐為と出会い、囲碁とは無縁の人生を送る予定だったはずでしたが、佐為の打つ碁を見て、自身も囲碁の魅力に取りつかれていきます。佐為と出会って初めて囲碁を打たせてあげるために、近くにあった碁会所へ行き、オッサンばかりだったところに1人同じくらいの年齢の少年がいたので、とりあえず佐為にその子と打たせることにしました。しかしその少年は小学6年生でありながらも実力はプロ並みで、父親は囲碁界の頂点に君臨し、七大タイトルのうち五冠(名人・十段・碁聖・天元・王座)を有するタイトルホルダーである塔矢行洋の息子、塔矢アキラでした。日本中どこを探してもこの年齢でこの腕前の棋士はどこにもおらず、まさに神童として囲碁界でも将来を注目されていました。
ヒカルはそんな子だとは知らずに、とりあえず年が近そうな少年に手合いを挑みます(打つのは佐為ですが)。塔矢くんも指導碁レベルで打ってあげるかみたいなノリで打ってくれるのですが、佐為がめちゃくちゃ強すぎて塔矢アキラは歯が立ちませんでした。ヒカルは圧倒的な強さで塔矢アキラを打ちのめし、塔矢くんは自分と同世代に自分以上の打ち手がいると知って愕然とし、ヒカルを追うようになります(打ったのは佐為ですが)。
塔矢くんに「君もプロになるの?」と尋ねられるヒカルですが、ヒカルは囲碁の世界のことなんて何も知らず、軽口を叩いてしまうのですが、塔矢くんはこれに激おこです。完全に舐めた態度のヒカルを敵視します。再戦を挑み、塔矢くんも本気で臨みましたがこれにも圧倒的な力量差で敗北し、ヒカルを自分の倒すべき高い目標に掲げるようになります(打ったのは佐為ですが)。

囲碁部結成

中学生になったヒカルは囲碁部に入ることにし、自分の力で打って勝ちたいと思い少しずつ自分で打つようになります。しかし囲碁部が大会に出場するにはメンバーが3名いないとダメなのですが、筒井さんという人とヒカルしかメンバーがおりません。筒井さんと同学年の加賀という囲碁がそこそこ強い将棋部の人もいるのですが、囲碁はもう打たないようです。

そんなこんなで放課後や休日に暇なとき適当に碁会所巡りをして佐為に打たせていたヒカルですが、三谷という同い年の同じ中学に通う人と出会います。囲碁が打てるから真っ先に囲碁部に誘いますが、三谷くんは部活で碁を打つより、碁会所で賭け碁に勝利して大人からお金を貰う方が生産的だと考えて入ろうとしません。実力で勝っているなら良いのですが、三谷はイカサマをして勝ったりすることもあります。佐為がそれに気づいてヒカルに教えますが三谷はやめようとしません。そしてある日、イカサマしていることがバレてダケさんというオッサンに囲碁でフルボッコにされます。優しかった碁会所のマスターの差し金で、三谷の行為が目に余るためこうせざるを得なかったようです。賭け碁である以上、負けたら三谷もお金を払わないといけないのですが、結構な大金を賭けて対局をしてしまったため払えません。ヒカルと佐為が助けてあげて、その局面のまま佐為が打ち逆転勝ちし、三谷にもう賭け碁もイカサマもやめるように約束させ、三谷は囲碁部に入ることになりました。

なんとか3人を集めることができ、囲碁部の大会に出場できることになったヒカルたちですが、いかんせんヒカルの実力がかなり弱いのです。三谷が一番打てて、次に筒井さんといった感じです。
一方、塔矢アキラは自分よりめちゃくちゃ強い同い年の進藤ヒカルが中学校の囲碁部に入部したということを聞き驚愕します。普通はプロの道を目指すために院生になるか、そのままプロ試験を受けるかするのですが、プロのトップ棋士レベルのヒカルがなんで中学囲碁部に!?といった状態です。塔矢くんはヒカルとのリベンジをしたいがため、十分にプロとしての実力があるのに海王中の囲碁部に入部し、これまた囲碁界隈を驚かせます。

なんやかんやあり、囲碁部の大会で葉瀬中(ヒカルの中学)と海王中(塔矢くんの中学)が戦うことになり、ヒカルと塔矢くんの再戦が行われます。塔矢くんは打倒進藤ヒカルのためにめちゃくちゃ勉強して力をさらに付けてリベンジを果たそうとしますが、前回も前々回も完膚なきまでに実力差で負けたこともあり、碁筒の蓋を持つ手が震えてしまいます。このヒカルとの対局のために囲碁部にまで入って絶対に倒さなくてはならない目標なのです。
しかしヒカルは序盤、佐為に打たせていましたが、真剣に挑んでくる塔矢アキラの姿勢に引き寄せられ囲碁に興味を持ち、塔矢アキラを目標として囲碁部に入部し囲碁を真剣に始めました。そんな塔矢が真剣な厳しい眼差しで佐為に挑んでくる姿に、ヒカルも自身と塔矢くんとの距離の差を確かめたいと思い、自分で打ち始めます。
塔矢アキラは急に素人のような手付きになったヒカルに「ふざけるな!!」とブチギレますが、ヒカルは真剣です。佐為も、ヒカルの足音が後ろから迫ってることに気付くべきだと心の中で塔矢くんに忠告します。ヒカルと塔矢くんの対局は塔矢くんの中押し勝ちとなり、塔矢は目に涙を浮かべて怒りに震えヒカルに深く失望します。ヒカルも全くと言っていいほどに塔矢に歯が立たず涙を流します。しかし佐為はヒカルのその発想や閃きは、後に続く碁の力をつければいずれ脅威的な力と成り得ると賛辞しています。なによりも、囲碁は常識にとらわれず、柔軟な発想力が武器になるゲームでもあるのです。

塔矢アキラはさっさとプロになることを決意し、自身の父親である塔矢行洋を目標に定め直しますが、ヒカルと最初に打った底知れぬ強さは謎に包まれたままとなります。
ここが後に大きな伏線となって、わりとガチで泣けてくるので意外と序盤のこういうフェーズは重要であったりします。


院生、そしてプロ試験

塔矢を目標にして自分で打つようになったヒカルはとにかく経験を積むために囲碁を打ちまくります。その一方で囲碁が打ちたいと思う佐為のためにネット碁を「sai」というハンドルネームですることになります。ネット碁であれば自身の姿もバレずに佐為に好きに打たせてあげることができるので、佐為に打たせてあげる環境においては最高です。
しかし佐為はめちゃくちゃ強いため、すぐに囲碁ファンの間では噂となり、アマチュアの国際大会では「sai」がどこかにいると噂されたりと海外の方に話題にされいます。ちなみにヒカルはパソコンの使い方が分かっていなく、キーボードで文字も打てないためチャットができないし、外国の方と対局しても英語が分からないのでコミュニケーションが取れないのですが、唯一「zelda」というハンドルネームの日本人とだけ「オレ、ツヨイダロ!」とチャットをします。そのたった1回のチャットだけで「sai」は子供なのではないかと推測され、その噂も塔矢アキラの耳に入ってきます。子供でめちゃくちゃ強い・・進藤!?となるのですが、囲碁部の大会で打った碁が全てだと自分に言い聞かせます。
しかし塔矢は「sai」と打つ機会を得て、最後まで打ち切るのですが、やはり進藤ヒカルを捕まえたという手応えをどこかに感じており、さらに碁会所に通う常連さんから進藤ヒカルくんをネットカフェで見かけたと言われ、塔矢は鬼の形相で場所を聞きその現場へ向かいます。
実際にヒカルはそのネットカフェでパソコンをいじっていたのですが、運よく囲碁は打っておらず漫画のホームページを見ていました。ヒカルも佐為もネット碁で塔矢アキラと打っていると勘づいていたので、ここはなんとかして誤魔化して乗り切るのですが、塔矢に「君の前にはもう現れない」と言われます。塔矢も初めて出会った頃のヒカルの強さが忘れられずにいましたが、もう本当に今回切りで諦めるという宣言です。
ヒカルはその言葉を受け「俺の幻影ばっかり追っているといつか本当の俺に足元掬われるぞ」と言い返しますが「君が?(笑)いつかと言わずに今から打とうか?」と煽られます。また佐為に打たせて勝ったところでなんの意味もないし、ヒカルは自分の実力で塔矢に追いつくために囲碁を一生懸命勉強しているので、何も言い返せませんでした。
そんなネットでの「sai」騒動もあり、夏休みも終わるということもあってヒカルはもうネット碁をやめることにします。

ネット碁をやめ、佐為と対局をしていくうちに急速に力をつけ始めたヒカルは塔矢がプロ試験に合格してプロになったということを知り、院生になることを決めます。院生とは小学生高学年~大学生くらいまでの若い子がプロ試験合格を目指すための養成所みたいなものです。院生には順位とクラスがあり、1組1位が一番強く、2組最下位が一番弱いです。その中で対局を行い自身の順位をどんどん上げていくようなシステムですが、院生で1組1位をずっとキープをし続けたところでプロ試験に合格しなかったらプロにはなれません。ちなみに院生になるとアマの試合には出られなくなるので、囲碁部の大会にも出場できないため、ヒカルは囲碁部を退部し、プロを目指します。
院生試験に合格し、院生になれたヒカルは、院生の中の最下位から歩みを進めていくのですが、「オレは塔矢アキラにライバル視されている」という発言をしたことによって1組の上位連中に注目されます。しかし実際にヒカルの手合いをしてみると、到底塔矢アキラがライバル視するような強さではないと思い、何かの間違いだろうと一旦落ち着きます。
色々となんやかんやあり、ヒカルも力をつけて1組にまで上り詰めて、1組上位の人間たちとも同じプロを目指すもの同士として切磋琢磨していき友情も芽生え仲良くなるのですが、夏のプロ試験では敵同士となるわけです。

プロ試験の予選が始まり、院生だけでなくプロ目指す外来の人間も参加するため、ヒカルのは大人との対局にあまり慣れず、上手く実力が出せずにいました。院生1組の伊角さんと和谷が、ヒカルと一緒に色々な碁会所巡りをさせて、とにかく大人相手への耐性を付けさせる特訓をしてくれたおかげもあり、無事にヒカルは予選を突破してプロ試験の本戦へ歩みを進めることができます。プロになる以上はそこらへんのアマに負けているようでは話になりません。

本戦が夏頃から開始され秋か冬には終わるのですが、毎週日・火・土の3回で9週間掛けての長丁場となります。28人の総当たり戦となり、戦績上位3名がプロになれます。和谷や伊角さんだけでなく、何年もこのプロ試験に挑んでなかなかプロになれない者も多くおり、完全に実力だけがモノを言う世界です。
ヒカルは日々佐為との対局に加え、院生での手合いや碁会所巡りの甲斐もあり、めきめきと力を付けていっています。元々の素質も佐為が見抜くほどにあるわけで、予選の頃とは比べ物にならないほどに力を付けたと周りも言っています。
そんなプロ試験の合格者ですが、越智、和谷、ヒカルの3名となります。作中でも結構長くシビアな世界を忠実に再現しており、見ているこちらまで心が苦しくなるような描写も多く、希望ある者から諦めざるを得ない者まで、しっかりとその人々の心の模様が描かれているのがとても素晴らしくもあり、囲碁のプロになることはこんなにも狭き門を勝ち抜いていかなきゃいけないのだと漫画やアニメからで十分に伝わってきます。

プロ棋士になって

晴れてヒカルは14歳でプロになれるのですが、ここがゴールではなくここからスタートを切るのです。プロは毎月の手合いがあるほかにも、アマのための囲碁イベントに出席したりと、わりと“仕事”って感じのこともやっています。そのほかにもタイトル戦の予選だったり、勉強会だったり、とにかく囲碁を中心に生活をして生計を立てていくという形になります。

実際の現実のプロもこんな感じなのではないでしょうか。七大タイトルのタイトルホルダーになれると、賞金4000万円とか貰えたりします。まぁタイトル獲れるレベルになると賞金以前に囲碁界での地位や名声のほうが高くつくと思いますけどね。
ヒカルの碁では結構年配の方のタイトル保持者が多く、年の功=囲碁の強さみたいな昔のような描かれ方をしています。現実の囲碁のプロですと、2010年頃から井山裕太さんという当時20歳で名人のタイトルを獲得した超天才がいます。ちなみに名人のタイトルは賞金4000万円くらい貰えます。井山さんは後に七冠を達成し、日本のプロ棋士で初の快挙となる偉業を達成します。これはマジで凄まじいことです。タイトルというのは1回獲得したら、次は防衛をしなくてはならないのですが、これにずっと勝ち続けて防衛し、、さらに獲得していないタイトル戦の予選を勝ち抜きタイトル戦でタイトル保持者を打ち負かしてタイトルを新たに獲得するという作業が必要となってくるわけです。
先ほどから七大タイトルだの七冠だのと言っていますが、囲碁にも将棋にも主要なタイトルが7つあり、実力さえあれば1人でいくつも保持することもできます。井山裕太さんは、1人でタイトルを7つ同時に保持したのです。
詳しくは日本棋院のサイトのこちらに掲載されていますのでご興味ある方は御覧下さい。

ヒカルはプロとなり、より一層自身の棋力を伸ばしていくのですが、プロになると新初段シリーズといって、新人プロvsベテランプロみたいな一種のお祭りみたいなイベントがあります。そこで進藤ヒカル初段はなんと塔矢アキラの父親である塔矢行洋に新初段シリーズの対局相手として指名されます。そこで佐為もビクゥッと反応し「私に打たせて下さい!」とすかさずヒカルに頼みます。ただ、自身の実力でプロになったヒカルが公の場で佐為に打たせてしまったらその実力の乖離にえらい騒ぎとなります。同じ院生で一緒にプロ入りを果たした和谷や越智にもどんな棋風なのか、どれほどの実力なのかは知られていますから、ここで佐為に打たせるわけにはいきません。
ただ、どうしても佐為があの者と打ちたいと深刻に懇願してくるので、ヒカルも考え、自分の中でハンデをつけて打つならバレないと思い、それで良いのならと許諾します。ただ、これもヒカルはかなり渋っての判断ですが、佐為のためを思ってです。
そして佐為もハンデを背負ってでの対局ですので不完全燃焼なって終わるのですが、一旦は新初段シリーズを無事に終えます。他の人間から見ても無茶な手が多いという評価をされて、あまり良い印象を与えられませんでした。
多忙を極めている塔矢行洋ですが、疲労によって倒れてしまい暫く入院することになります。そこで病室は暇なのでネット碁のやり方を教えてもらい、自身の名前を明かした状態でネット碁をするようになります。それを見たヒカルは、これなら佐為にも互先で打たせてやれるぞと思い、入院している塔矢行洋のお見舞いがてら、めちゃくちゃ囲碁が強いやつがいるけどネット碁でしか打てないと説明し対局を申し込みます。塔矢行洋は最初は断っていましたが、ヒカル必死の説得により許諾し、日時や時間を伏せてネットで打つことになります。
塔矢アキラは父が面会を一切拒絶する時間帯があることを知り、少し不審に思い尋ねますが、ネット碁に集中したいとの理由でそのまま追求することなく場を流しました。
そして世間では塔矢行洋と「sai」が今ネットで対局しているぞとリアルタイムで注目をし始めます。これにも塔矢アキラは気づき、「saiだと!?」と、初めて出会った頃の進藤ヒカルを彷彿とさせるあの「sai」が父親と打っていることに驚きを隠せません。今日は面会を拒絶してネット碁に集中したいと言っていた父親ですが、これは偶然対局が始まったのではなく、父に何者かがコンタクトを取り、あらかじめスケジュールを設定されていた対局だとすぐに察します。父が「sai」の正体を知っている。しかもそこで「sai」と名乗るハンドルネームのユーザーは本当にあの「sai」ほどの実力があり、紛れもない本物であると察しています。


そしてsaiと塔矢行洋の対局は、僅差でsaiの勝利となり、お互い全力を出し切り、まだまだこんなに強い相手がいるのだとお互いがお互いを讃えあうような頂上決戦として対局を終えました。
ここでヒカルは誰も気付いていない塔矢行洋の微妙なミスに気付き、佐為が負けていた可能性があるとを指摘をします。

それに佐為もハッとさせられて、なぜ神は私を幽霊として誰かに取り憑くような死後を全うさせているのかに気付くことになります。そしてヒカルにこの一局を見せるために私は存在していたと悟り、これは予測でも推測でもなく、佐為自身が体で感じた直感であり、確実なものとなります。そして自らの成仏も近いことも悟ります。
そんなヒカルは佐為の事情も知らず、佐為と行洋の一局を観戦したことで実力が上ったことを自覚して好成績を収め続けます。手合いだけでなく、プロとしてのイベント等でも忙しくしている中、佐為はヒカル以外とももっと打ちたいと、普段とは違う少し暗い神妙なテンションでヒカルに言いますが、ヒカルはヒカルで自身の強さの向上を感じてヒカルももっと色々な人と打ちたいと思うばかりで佐為との仲は少し悪くなりつつあります。
そして5月5日のこどもの日に、プロの仕事として囲碁のイベントから自宅へ帰ってきたヒカルは寝ようと思いますが、佐為に一局打ちたいと言われ、しぶしぶ打ちます。ヒカルはだいぶ眠たげで、朧気の中で打っている最中、佐為は自らの役目が終わったことを悟って、陽光の中に消えてゆきます。

囲碁だけでなく、小学6年生から中学3年生まで、ヒカルが佐為と過ごした時間はかけがえのないものであり、佐為自身も最期の言葉は「ヒカル、楽しかっ────。」となっており、このシーンは涙なしでは見れません。
そんな寝ぼけ眼のヒカルは、中々佐為が次の一手を打たないので、怒りますが、どこを見渡しても佐為がいません。窓は帰ってきたときに自ら開けておき、鯉のぼりが風にそよぐ5月5日の昼下がり。ヒカルは佐為がいなくることは初めてで動揺を隠せませんが、風に飛ばされてどっかに行ったか、自由に動き回れるようになったんだと思い、佐為を探します。


藤原佐為の消失

佐為が消えてしまったその日にその足で佐為を探しに行くヒカルですが、まず佐為と初めて出会ったおじいちゃんの家の蔵の碁盤を確認してみると、初めて会ったときは確かに色濃く見えていたシミのようなものが完全に消えていました。以前に佐為と一緒にここへ来たときに、佐為は「もうじき私はきえてしまう」と言っていたのを思い出すヒカルですが、自分がもっと打ちたいがために気を引こうとしているだけだと思っていました。
プロ試験予選の特訓として碁会所巡りしていた時に知り合ったタクシードライバーの河合さんというテンション高めのおっちゃんに偶然会い、一緒に本因坊秀策のお墓があるという広島県の因島まで新幹線で行くことになります。物凄い弾丸旅行です。しかし秀策の所縁のある場所をすべて廻っても佐為はどこにもおりません。ヒカルも心の声で「隠れてないで出てこいよ」と必死に叫びますが、当然佐為は見つかりません。消えてしまいましたから。。
1泊して広島を諦め、東京にも秀策の墓があることを知り、東京へ戻りますが、やはりここにも佐為はいませんでした。

棋院にもう一度行って佐為を探すヒカルですが、職員にオバケが出そうな場所をないか聞き、物凄く昔から現在までの棋譜が大量に保管されている倉庫を案内されます。しかしそこにも佐為はおりませんでしたが、本因坊秀策の棋譜を見せてもらうのですが、ヒカルはその棋譜を見て改めて佐為の実力の凄さを知り、天才だと実感します。それと同時に、もっと佐為に打たせてやればよかったという後悔がヒカルに押し寄せてきます。プロになった今のヒカルだからこそ分かることで、碁なんか全然知らなくて佐為の強さがちっとも分からなかった頃のことを悔やみ、自分がただ打ちたいと思うことがいけなかったのだと思います。

どんなに願っても悔やんでも佐為は戻ってきませんが、自分が打ちたいと思うこと自体が佐為が自分の前から消えてしまった原因だと考えるヒカルは、もう碁を打たなければまた佐為が自分の目の前に現れてくれるのではないとか思い、プロの手合いもすべてサボり囲碁を一切打たなくなります。代わりに学校へ行ってます。
プロへ上ってきた進藤ヒカルの実力を見れると期待していた塔矢アキラですが、ヒカルが突然手合いをサボるようになり、結局ヒカルの実力を見れずじまいとなってかなりお怒りの様子です。同期でプロ入りした和谷や、院生の仲間たちも心配している様子です。
そしてついにしびれを切らした塔矢はヒカルの学校へ押しかけて理由を聞きに行きます。ヒカルは「オレなんかが打ってもしょうがない」と言います、塔矢は「そうは思わない」と言いますが、ヒカルは自分の中にいる佐為の幻影を塔矢が見ているからそんなことを言っているのだと思っています。そして「オレはもう打たない」と塔矢に告げ、塔矢は「ふざけるな!」とヒカルに言い寄ります。
塔矢がヒカルに期待するその眼差しは佐為なのに、佐為は消えてしまったから塔矢に佐為と打たせてやることは叶わないんだと、突然その場を逃げ出します。
塔矢は「なんのためにプロになったんだキミは!」と、まさにその通りです。

佐為が消え、戻ってきてもらうために碁を打たなくなっても佐為は戻ってきません。そして進藤ヒカル初段としてプロの戦績も不戦敗が続いていきます。そんなときに中国から修行帰りしてきた伊角さんがヒカルの家を訪ねます。
ヒカルと伊角さんはプロ試験本戦の際に、伊角さんのミス&剥がしによって反則負けとなったのですが、ヒカルも実際は結構押されていたため、ラッキーな勝ちとなっていたため消化不良な感じとなってしまい、頭にその盤面がずっと残って次の対局では負けてしまいました。佐為と昨日の伊角さんとの対局の続きを打ちましょうと言われ、しっかりと最後まで佐為と打ち切り、ヒカルはそこで伊角さんとの後味の悪い対局は吹っ切れるのですが、伊角さん自身は結構引きずったままで、結局プロ試験は合格できませんでした。その年に院生も辞めて中国へ修行をしにいっていたのですが、日本へ帰国してきてヒカルがずっと不戦敗続きとなっていることが気がかりとなります。なんせ自分を差し置いてプロへの道を開いたヒカルですから、理由も知りたくなるでしょう。

ヒカルも塔矢や和谷や奈瀬などと、色々な人からどうしたんだと言われますが、そこでは理由を打ち明けることはありませんし、伊角さんに対しても同様です。しかし伊角さんはあの去年のプロ試験本戦での反則負けをした対局がヒカルとの最後の対局となってしまっているため、今年のプロ試験本戦が始まる前に一局きちんと打ちたいとお願いをし、ヒカルもそのためならまぁいいかいう感じで了承し、心の中で「自分のためじゃなく、伊角さんのために打つんだからな」と、もう居ない佐為に呼びかけます。
数カ月ぶりに囲碁に触れるヒカルですが、伊角さんとヒカルは同じ棋力くらいの相手でもあり、中々に白熱した対局となります。ヒカルも対局に「ワクワクしちゃいけない」という気持ちで必死に自分を誤魔化そうとしますが、お互い妥協のない本気の対局となっています。次第に夢中になって打つヒカルですが、自身でも意識しないうちにその打ち方は佐為を彷彿とさせるものとなっていることに気付きます。一番佐為と近くにいたヒカルだからこそ分かる「あんな風に打っていたんだ」という確かなもの。ヒカルは自分の打つ碁の中に佐為を見つけます。もう佐為には会えないけど、自分が打つその碁の中に佐為がいることに気付き、打っていいのかもしれないと悟り、これを機にヒカルはプロへ復帰します。

そして本因坊戦予選リーグでヒカルと塔矢が公式に対局することが決まり、お互いかなり意識をし始めます。塔矢はヒカルがどれほど強くなってどれだけの実力を秘めているのか。そしてヒカルは塔矢にどれだけ近づけているのか。
2人の対局日になり、囲碁部の大会ぶりに対局をすることになるヒカルと塔矢。ここで2人がやっとまともに会話する様子も見れてなんとも微笑ましい光景です。2年4カ月ぶりに対局し、お互いがこの一局をどれだけ待ち望んでいたかを現すかのように早碁で進行していきます。
昼休憩で一旦打ち掛けとなるとき、塔矢は「sai」のことを口にします。

ヒカルしか知らなかった佐為を、塔矢が見つけます。もう消えてしまった佐為ですが、ヒカルが打つその碁には、たしかに佐為が教えてくれた打ち方が生きています。塔矢がそれに気づいてくれたことがヒカルは何よりも嬉しく、そして衝撃で、けど今のヒカルの打つ碁がキミのすべてだとも塔矢は言ってくれています。
ヒカルも「オレはsaiじゃないぜ」と落ち着いた表情で返しますが、いつか塔矢には話すかもしれないと、ちょっと謎があるようなニュアンスを伝えその場を去りますが塔矢はこれに釣られてヒカルを追います。ヒカル自身はもっとずっと先に話すと言っていますが、2人がいいおじさんくらいになったらヒカルが語ってくれたりするのでしょうかね。

ヒカルは塔矢に負けてしまいますが、2人のわだかまりのようなものは無くなり、実力的にも近い者同士であり、初めて出会った碁会所で学校帰りとかで頻繁に打つようになります。お互いがお互いの強さを認め合い、意見を交換しあえるほどで、しかしヒートアップして子供のような喧嘩をする頻度も多いようです。
そしてヒカルの夢に佐為が出てくるのですが、佐為は一言もしゃべらずヒカルの話を聞いてただ微笑んでいるだけです。ヒカルも佐為が消えてから塔矢と打ったことや伊角さんがプロ試験に合格したことや三谷が囲碁部大会で勝ったことなど、嬉しそうに佐為に話します。囲碁だけでなく、ヒカルの周りの人間関係における話も佐為はヒカルと同じように経験してきているわけで、2人はなんでも話せる間柄なのが伺えてとても嬉しくも切なくもなります。夢の最後に佐為はヒカルに扇子を渡して目が覚めます。実際に目が覚めて扇子が手元にあるわけはないのですが、これは佐為が追い求めていた神の一手に続く道をヒカルへ託し、ヒカルが佐為の意志を受け継いでヒカルも神の一手へ続く道を歩むというメタファーになっていると思います。
ここで大まかなヒカルの碁の話は一旦終わり、番外として北斗杯篇へと続きます。


北斗杯

プロへ復帰し才能を爆発させ続けるヒカルですが、春から夏にかけて不戦敗が続いていたため初段のままメキメキと力をつけ頭角を現すヒカルで、実力はもう高段者クラスはあり、塔矢アキラとも肩を並べるほどです。
そんな中、18歳以下が出場可能の国際試合の北斗杯という大会があることを知り、日本のプロ18歳以下で選抜メンバーを決める選抜戦が行われます、関東からはヒカル、和谷、越智が出場します。塔矢は実力が段違いなのでメンバーに内定しており選抜戦には出ません。ちなみに伊角さんは年齢制限で出場できず残念がっています。笑
塔矢がすでに選抜メンバー確定しているので、残り2名の枠を、関東・関西・中部で争うことになります。ここまで話しておいてあれですが、その先は是非あなたの目で確かめて頂きたいです。
ヒカルだけでなく、他のプロ棋士たちの人間模様もリアルに描かれていてとても見応えのあるものいなっているのが北斗杯篇です。

人間誰しもが成長し自分自身で生きていく

『ヒカルの碁』とタイトルにあるように、全巻を読み終えてあらためてこのタイトルの意味の深さ、そしてそれは皆誰もが持ち合わせていなくてはいけない生きるための生活力だったり問題解決能力だったり成長していく伸びしろだったりします。
佐為がいなくなって自分自身で囲碁と向き合う覚悟を決めた進藤ヒカルですが、北斗杯でこんなセリフがあります。

だけどオレしかいない
この碁を投了するのも立て直すのも
ここにいるオレしかいない!

ヒカルの碁 第179局 『中国 vs 日本 ②』

このセリフが聞けるのはほぼ終盤なのですが、1巻からのヒカルと比較するとめちゃくちゃ成長したなと感慨深くなります。佐為がいなくなってしまうのは当然さみしいのですが、現世に生きる人間として囲碁を打つ進藤ヒカルが、平安の最強棋士、藤原佐為の意志を受け継いで自らの頭で考えて打つその囲碁で、神の一手に近づける、なんとも情緒と浪漫のある物語なのでしょうか。
ヒカルの碁は北斗杯が終わって少しエピローグがあって終わってしまうのですが、ヒカルたちはその後もプロとしての厳しく険しい道を歩み切磋琢磨していくのですが、そこの想像は読者に委ねられております。
現実に井山裕太さんのような20代で七冠達成するような偉業を成し遂げる人もいるわけですから、ヒカルの碁の世界でも、ヒカルと塔矢を中心に囲碁界が回り始めて、塔矢とヒカルの2人がタイトルを寡占していたりするのではと勝手に妄想したりもしています。

この『ヒカルの碁』ですが、アニメ版もほぼ原作通り忠実に放送していたのでアニメで見ても全然問題ないと思います。むしろアニメだとBGMや声優さんの演技力だったりもクオリティがめちゃくちゃ高いので、アニメを見たことない人はそちらもオススメです。ただし北斗杯の選抜予選までしか制作されておりません。(作画崩壊してる回も多々あります)

進藤ヒカルの囲碁人生の始まりからの成長・人間模様を描いた人間味のある人間ドラマメインの作品です。見ていない方はぜひ見て頂きたいです。囲碁のルール分からなくてもこの作品は登場人物の人間模様と成長がとても面白いので全く問題ありません。見るべし!!

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