NHKにようこそ! アイキャッチ

NHKにようこそ!を見て現実を直視しよう


どうも、みなさんこんにちは。
今回は『NHKにようこそ!』について語りたいと思います。
(ちなみにアニメ版の正式タイトルは『N・H・Kにようこそ!』です。)

引きこもりの主人公、佐藤達広が自分の人生をどうにかしようと周りの人間に助けられながら色々と奮起して現状を打破していこうとする作品です。今から主に語るのはアニメ版についてなのですが、小説版や漫画版等と色々出てます。原作は小説で滝本竜彦さんという方が書かれてます。
ネタバレ有りで語っていますのでご注意ください!


タイトルに込められたもの

NHKにようこそ! サントラ歌詞カード

タイトルにもある「NHK」なんですが、「え?引きこもりの主人公がNHKに就職する話なの?」と、あの有名な放送局を連想されると思うのですが、これとは別の略語になってます。
アニメが放送してたのは2006年7月~12月までの全24話でテレ玉で私はリアルタイムで見ていたのですが、流石に地上波放送となるとあの放送局の名前は使えないようです。
ちなみにその略語は「日本ひきこもり協会」で、1話からこのワードは登場し、最終話まで良い伏線となって登場し続けます。

おしゃれな演出

NHKにようこそ! サントラ歌詞カード

私が当時高校1年生でまだ深夜アニメというものを一切知らなかったのですが、たしか当時夏休みだから夜更かししてたのか深夜にテレビのチャンネルを適当にザッピングしてるとこのアニメが放送してました。
最初に見たシーンも鮮明に覚えてます。
6話のクラスルームにようこそ!という回で主人公の佐藤達広が一睡も出来ずに「お兄ちゃん朝だよ~」と喋る目覚まし時計と共にぐでーっとしてるシーンでした。最後のシーンでは岬ちゃんから天使の羽が生えてるのを佐藤くんが錯覚して見ているシーンは、この子は主人公にしか見えない美少女?と思いながら見つつ、気になって全話みてリアルタイム放送を追うようになりました。
アニメーションはGONZOという製作会社が作っていて当時のゴールデンタイムに放送してるものとは違う雰囲気や色合いと話の進み方、BGMに大変魅了されてしまってました。
何より当時のアニメ界隈がどうだったのかは知り得ませんが、アニメって戦闘がつきもので人間ドラマメインの現実を舞台にした子供向けじゃないアニメというものを見たことがなく、自身の当時の年齢とも相まってどハマりしたのだと思ってます。


緩急のあるサウンド

NHKにようこそ! サントラ歌詞カード

そしてこの作品を語っていく上で欠かせないのが音楽です
私は基本的に作品を好きになるとサントラを買うのですが、この作品も例に漏れずサントラを買いました
ダークサイドにようこそ!と、サニーサイドにようこそ!という2種類のサントラが出ています。このブログ記事のトップ画像に設定してあるものです。
2つ欲しかったのですがどこを探してもサニーサイドしか売ってなかったのでダークサイドのサントラは買えませんでした。が、つい最近Amazonの中古で買いました。やはり名曲揃いです。
パール兄弟という方が音楽を手掛けており穏やかなBGMからノスタルジックに浸れるような切ないBGM、そして人心を搔き乱すロックのようなメタルのような曲まであり、まさに日常に添えられた喜怒哀楽を音にしたような表現だと思います。
特に好きなのが「きょうは夕陽野郎」「午睡にたらす釣り糸」「恋は放課後のように」です。YouTubeで探せばあるかもしれません。
「ダークサイドについてきて」という曲は中原岬役の牧原由衣さんがボーカルで歌っていて、作中もデートの練習シーンで一度流れています。この曲もすごく良いです。
曲だけ流してセリフなしの映像だけで表現するあの演出もなかなか好きです。

物語は日常的な引きこもりの暮らし

NHKにようこそ! サントラ歌詞カード

ネタバレで語ってしまいますが、主人公の佐藤達広は大学1年の夏に街ゆく人々が自分を馬鹿にしているのではないかと被害妄想が激しくなり、その日以来ひきこもりとなり、4年が経ちます。(一人暮らしなので恐らくコンビニとかには出かけているとは思いますが)
住んでるアパートの隣にアニソンを大音量で流すオタクが引っ越してきたが、その人物が高校時代の後輩の山崎薫という人物でした。
山崎は佐藤くんのことを慕っていましたが、ひきこもりということを知るや否やほぼ対等の関係で接するようになります。
流石に4年もひきこもりやってんのもまずいなと自覚した佐藤くんは意を決してネットカフェのアルバイトの面接に出向くのですが、店に入ると超絶可愛い女の子が受付をしていてこれに佐藤くんはたじろいでしまい何故かナンパをして有無を言わさずそのまま店を出て勝手に帰ります。
この超絶可愛い女の子が俗に言う「岬ちゃん」の愛称で有名な中原岬です。岬ちゃんには策略があり、佐藤くんをひきこもりから脱却させてあげるプロジェクトを用意してあげます。
なんやかんやあって佐藤くんは自分がひきこもりだと認めてプロジェクトに乗っかり、さらに山崎ともゲーム製作を行うことになり冬コミを目指します。急に予定がたっぷりあるリア充のようで少し羨ましさもありますね。
最終的に色々なトラブルに巻き込まれながらも佐藤くんはひきこもりを脱して、というより常人より確実にアクティブだろとツッコミたくなるようなシーンや回も多々ありますが、物語の真相に迫っていくわけとなります。



ちなみに山崎という人物は濃ゆく僕個人もかなり好きなのですが、色々と事情を背負って東京にやってきています。
親に人生をガチガチに決められていたのを知り啖呵を切って実家を飛び出して東京に出てきてバイトしながら専門学校に通っているんですが、父親が倒れて実家に戻らなきゃならざるを得ない状況になります。
東京で出来た彼女もいますが、結局どう足掻いても決められたレールの上を歩かなきゃいけないんだと嘆き、一方的に嫌われるような行動をして彼女と別れ、専門学校の教科書も燃やして東京で得たものや繋がりを全て断ち切ってしまいます。
ただ彼は東京で生きた証が欲しかっただけだと寂しげに語り、地元の北海道へと帰っていきます。
ここらへんの主な話は20話の「冬の日にようこそ!」という回なのですが、当時僕は物凄く心を締め付けられて色々と考えさせられました。最後のセリフとシーンは味わい深く切なくてガチ涙目でした。散々悪態をついて彼女と別れてしまった山崎ですが「さよなら、七菜子さん」と本音が伺えます。
ちなみに山崎の声優は銀魂の新八役の阪口大助さんです。
別に当時の僕が山崎のような経験をしているわけではないのですがこの回の演出は頭から最後まで本当に上手く良くできてます。ノスタルジックな感情に心を引っ掴まれているような気がしています。


物語の真相は

NHKにようこそ! サントラ歌詞カード

このお話の真実となりますが、ことの発端は岬ちゃんによるプロジェクトが全ての始まりです。
実はこの佐藤くんをひきこもりから脱却させるプロジェクトは岬ちゃんのためでもあり、岬ちゃん自身も学校へ行けなかったり、誰かに必要とされたいと悩みを抱えて生きていました。そこに現れたのが自分よりダメそうな人間、佐藤達広。作中では伏線的に匂わせるような描写が所々にあり、佐藤くんがひきこもりを脱出した後から顕著に現れていきます。佐藤くんを救済すると謳っていたプロジェクトでしたが、いざ佐藤くんが真人間への道を自らの手で切り開けるようになると、岬ちゃんはもう自分は必要ないのかと不安と恐怖を感じます。ただ、決して佐藤くんが引きこもりのままでいて良いとも思っていなく、「おめでとう、佐藤くん」と寂しげに心の中でつぶやくシーンがあります。
佐藤くんとひきこもり脱出の講義をする際にも、神様は悪いやつで、自分に良いことが起こらずつらく苦しいことが起こるのは意地悪な神様のせいと岬ちゃんは説明してます。ただ、岬ちゃん自身は神様を上手く信じ込むことができないようで聖書かなんかみたく派手な奇跡が起これば私もみんなのように信じられて悪いことの全てを神様のせいにできるのにと嘆いています。岬ちゃんは両親が再婚し2人目の父親から虐待を受け、母親は自殺をしてしまい、全て自分が悪い、自分がいけないのだと思ってしまう傾向にあります。これは恐らく虐待を受けた時に自身を否定されるような言葉を浴びせられたものの影響でもあると思います。
プロジェクトの全工程を終えて佐藤くんに契約を持ちかけます。自分をずっと必要として、自分も佐藤くんを必要とするといった契約内容なのですが、佐藤くんはこんな形で互いを依存し縛り付けるのは虚しすぎると拒否します。そもそも佐藤くんは岬ちゃんを救う資格なんてないと思ってます。岬ちゃんみたいな可愛い子なら自分といるよりももっと素敵な人生をゲットできると諭しますが、岬ちゃんも最後の希望を失ったような気持ちで佐藤くんと会わなくなってしまいます。
ここで佐藤くんは山崎もいなく岬ちゃんもいなくなり、親からの仕送りも打ち切られて働くしかない状況に陥りアルバイトを始めます。わりとここは1話からずっと見てきた身としてはそこそこ感動的で人間味の溢れるシーンでした。
岬ちゃんも佐藤くんがバイトを始めて自分で生活できるようになったことを知り、本当に自分がこの世で必要とされない存在と思い、故郷で自殺をしようと決意します。
岬ちゃんの置き手紙で佐藤くんはそれを察し、岬ちゃんの故郷を特急列車で向かいますが、佐藤くんは特急で岬ちゃんは普通の電車で行ってたので追い越してしまいます。ちなみに岬ちゃんの故郷は尼御前岬(あまごぜんみさき)がモデルになっているようです。
場所も明確に分からない佐藤くんですが奇跡的に岬ちゃんを見つけます。なんという奇跡。しかしこれでハッピーエンドかと思ったが岬ちゃんはもう完全に自殺してやるモードでダークな感じになっています。これもまた可愛いです。佐藤くんが好きだ愛してるなどと安い言葉を投げかけますが岬ちゃんには何も届かず佐藤くんも諦めかけます。
岬ちゃんが崖から落ちようとする寸手で佐藤くんが岬ちゃんの手を掴み引き揚げ助けることができましたが、しかしどうにか説得しなくてはいけない佐藤くんは、岬ちゃんは悪くなくて、岬ちゃんを苦しめているやつが他にいるという考えに至ります。岬ちゃんがいつも苦しくて寂しくてやりきれないとしたら、それは不条理だ。だから、何処かに元凶が存在しているんだ。岬ちゃんを苦しめている悪者がいるんだ。と。
しかし陰謀の99%は単なる妄想、もしくは大嘘にすぎないと自分できちんと理解している佐藤くん。だけど残りの1%は本物ということに気付いてしまいます。
ずっと前から自分たちを苦しめる悪の組織、それはNHK
身の回りに起こる全ての悪いことはNHKのせいだと言い切り、精神攻撃をしてきたと迫真の演技を始めます。岬ちゃんも若干怖がってます。
ただ佐藤くんはしっかりと岬ちゃんのせいではない、岬ちゃんは悪くないと言い切ってくれています。そしてラスボスがここまでやってきたと言い、革命爆弾で捨身の特攻を仕掛けるため崖まで走り出してしまいます。
佐藤くんの魂胆としては自分が崖から飛び降りてNHKの元凶を捨身で倒してこれからは何も悪いことが起こらない世界で岬ちゃんは生きてくれと、佐藤くんの最期の願いになります。
走っている最中に佐藤くんは

…馬鹿だなぁ俺は…。
本当に馬鹿だぁ…。
好きな女の子の命を繋ぎとめるのに、
こんな方法しか思いつかないなんて…。

と、心の中で呟いています。ここでら佐藤くん自身もハッとし、岬ちゃんのことが好きだったことに気付かされています。
最高にドラマチックな死を演出したつもりですが、自殺が多いスポットらしく、なんと崖の下には金網が張られていました。
意地でもドラマチックに死なせてくれないのかよと泣く佐藤くんと、死んじゃダメだよ、死なないでよと泣き崩れる岬ちゃんが対照的に立場も逆になっている様子がなんとも現実感というか人間味の溢れる様相です。
そのまま近くにある岬ちゃんが昔住んでいた家で夜を過ごして東京へと帰ります
その時の会話が今までの2人とは少し違っていて他愛もない身の上話にぽつぽつと話を静かに弾ませている感じがなんとも心が朗らかになります。


エピローグを迎えて

もどかしい世界の上で

佐藤くんはひきこもりを脱出したわけで、岬ちゃんのプロジェクトももう必要ないのですが、今度は岬ちゃんが高校の勉強を佐藤くんに教わるために2人は会うようになります。健全で良好ですね。
岬ちゃんも陰謀のことやNHKのことは本気で信じているわけもなく、どうにかして自身を説得しようとするためのことだったってことはわかっていますが、私なりのNHKを考えてきたと佐藤くんに発表します。ちなみに岬ちゃんの中では佐藤くんのおかげで悪い悪は滅びたってことにしてくれてます。
これからも時には辛く、けど時には嬉しく思うことのある人生を毎日ダメだダメだとつぶやきながら生きていくんだろうと、そんな小さな覚悟を佐藤くんはしてこれからを生きていきます。
最後は岬ちゃんのこのセリフでエンディングに入ります。

これで佐藤君も私も
きっと大丈夫!

〝NHKにようこそ!〟

ちなみにこの作品のエンディング曲は素晴らしいので是非YouTubeとかで検索して見てほしいです。2クール目から牧野由依さんが歌う『もどかしい世界の上で』という曲に切り替わったのですが、初見で突然エンディングが変わったとき、この作品の格がグッと上がるのを肌で感じました。
詞の中の「ちっぽけな世界」と「はてしない世界」の対比が絶妙に切ないです。

この作品をみて

NHKにようこそ サントラ

先述したように僕はこのアニメを高校1年生の時にリアルタイムの放送で見ていました。
まだ16歳という年齢で、将来自分は何になるのだろうと、何ができるのだろう、誰に必要とされるのだろうと色々と不安なことが多かったのを覚えています。今も当然ありますが。笑
引っ込み思案で内向的で知らない人と接するのがあまり得意ではない性格でしたので、このままだとこんなふうにニートになるんだという焦りも当然ありました。ただ、見てる時は「こんなんになったら人生終わりだわwwww」って自分に自分で強がりながら視聴してました。
そんなティーンな私が特に感銘を受けたシーンは、あれだけ働かず人に頼りっきりの佐藤くんが餓死寸前まできたところで、バイトを始めたことです。こんな台詞が作中にあります。今でもあの頃から色褪せることなく強烈に覚えてるセリフです。

問い、何故引きこもり続けられるのか
答え、衣食住が保証されているから

これは佐藤くんが餓死寸前の時のセリフなのですが、僕は普通に実家で暮らして高校生をやっていましたが、結局最後はこうなるか、死ぬかの二択しかないと改めて思わされたシーンです。
想像するくらいならこれくらいは出来ていましたが、作品でこうもハッキリと演出されると心に重くのしかかってきます。
この作品の100%のおかげではないと思いますが、ニートになったらお終いだという、やることやらなきゃお終いだ、という心構えがより一層強くなった気がします。
ぜひ人生に悩みを抱えている内向的な方、思慮深い方はこの作品を見て何か人生のヒントを得られればと思っています。
良くも悪くもどちらに作用するかは分かりませんが、純粋に作品として音楽やキャラクター演出や情景描写がとても上手い作品で僕の人生に残る名作の1つです。

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