目次
7話~8話 (page.4)
7話
世界が必要としなくたって
本田今日子 (The Final 7話)
必要としてくれる誰かのために生きてく
私はね
あんたたちは
本田今日子 (The Final 7話)
どれくらい道に迷って
どれくらい時間をかけて
自分の答えに辿り着くのかなぁ
途方もない言葉に聞こえた
草摩夾 (The Final 7話)
俺は人に蔑まれるためだけに生まれ
人を傷付けるためだけに
生きているような気持ちを
初めから持ってたから
だってそうだろ
だからあの人
母さんは死んだんだ
結局は俺のせいだって
言いたかったんだろ
あんただって
笑ってくれたけど
今は俺を恨んで…
まさかとか思ってたりするから
草摩夾 (The Final 7話)
夢に出てきたんだ
釘を刺すために
思い上がるなって
勘違いするなって
まさか透も
俺を好きでいれくれるんじゃないかとか
そんな 馬鹿なこと
私と晶さんは出会うべくして出会った
草摩楝 (The Final 7話)
運命だったの
幸せだった
世界には私と晶さんしかいなくて
晶さんの世界には私しかいなくて
それで十分だった
十分だったのに
どうして楝は慊人を抱いてやらないの?
草摩晶 (The Final 7話)
私がわざわざ抱かなくたって
草摩楝 (The Final 7話)
その子はもうみんなに愛されているんでしょ
この子はそのために生まれて来た子なんだ
草摩晶 (The Final 7話)
仕方ないだろう
気付いていますよ
草摩紫呉 (The Final 7話)
あなたを見ていると
愛しさが沸いてくる
あの子が女として生きていたなら
あなたのような姿だったろうかと
妄想できて
そうですねぇ
是非あなたに取り上げてほしかった
あの箱はあなたが持つに相応しい
晶さんの亡霊に取り憑かれるのは
あなただけで十分だ
慊人には必要のないものですから
こんな者
草摩楝 (The Final 7話)
所詮、晶さんの暇を潰すための
おもちゃなだけじゃない
晶さんがいなくなってしまった今
あんたなんかもういらないのよ!
違う
草摩慊人 (The Final 7話)
僕は特別な存在で
永遠を約束されて
みんなも僕を待ってた
だから いらなくなんてない
だって 父さまがそう言ったんだ
父さまの言葉を馬鹿にする
お前の方こそ いらない
絆だの
草摩楝 (The Final 7話)
永遠だの
そうやって下らない妄想を
胸に抱いていればいい
そんなもの
どうせ長く続かない
そんなもの
いつか壊れて思い知ればいい
誰もあんたなんか
待ってなかったってことを
由希に会えた時は
草摩慊人 (The Final 7話)
嬉しかったなぁ
神様の僕と同じくらい長く生まれなかった
十二支の頂点の鼠憑きと会った頃は
あの女の前でひけらかすことだって
まだできてた
あの女の嫌味に傷付いたりしたって
あの頃は まだ…
どこで壊れ始めていたんだろ
僕の世界
一度紫呉と寝たくらいで調子に乗るな
草摩慊人 (The Final 7話)
僕は見限られてなんかいない
みんな 最後は僕のところへ戻ってくる
だって僕らは 離れることができないから
それが僕らの絆だ
聞き飽きたセリフだわ
草摩楝 (The Final 7話)
外の世界に触れた十二支のやつらが
雁字搦めに縛り付ける陰気なあんたの元へ
戻ってくるって本当に信じてるなら
誰もあんたの夢を壊せやしないんだって様を
私に見せ付けて勝ってごらんなさいよ!
そしてもしも
あんたが負けたら
土下座してここから出てって
信じてた
草摩慊人 (The Final 7話)
勝てるって信じてた
誰にも壊せやしないって
信じて
…違う
祈るような 願いだ
呪いのように
口にしないと死ぬかのように
同じような言葉を繰り返して
繰り返して
繰り返して
繰り返して
でももう だめだ
いってしまうんだ
僕を置いて
この女に負けたくなかった
草摩慊人 (The Final 7話)
どんな形であっても証明して
見せつけてやりたかった
だって 僕は
初めから…
そうだよ、空っぽだ
──
仲間はずれは 僕だったから
最初から 壊れてたから
心配しないで 慊人
草摩晶 (The Final 7話)
僕はお前を置いていくわけじゃないから
姿は見えなくなっても
そばにいるから
特別な子…
楝に一番喜んでもらいたかった
僕は結局
こうして死ぬだけの男だったけど
遺せる子どもができた
その子どもが特別な存在だったのは
僕と楝が 特別だったって証だろ
仲直り
できなかったね
…楝
ごめん
草摩燈路 (The Final 7話)
なんだか複雑な気分なんだ
もっと素直に喜べれば良かった
だけど 怒りとか 恨みとか
後悔とか懺悔とか
愛着とか色んなものが
ぐちゃぐちゃに
そうね
燈路の母親 (The Final 7話)
燈路ちゃんは
そういう絆と一緒に生きてきたんだものね
ずっと…
お別れ さびしいね
だめなんだ
草摩慊人 (The Final 7話)
もう 本当に
ぼろぼろ壊れていく
さよならが やってくるんだ
信じてるわけがないでしょう!
草摩のお局 (The Final 7話)
その箱は晶さんを亡くされ
憔悴している心をお慰めするために渡したもの
お守りのようなものです
中身がただの空であるぐらい
常識で分かることです!
半々だった あの箱
草摩慊人 (The Final 7話)
信じてたし 信じてなかった
開けても 空
でも もしかしたら
見えない力なのかもしれない
もしかしたら
もしかしたら…
そう思うと手放せなくて
でも もう確かめたくなくて
隠してた
そうさ ずっと
草摩慊人 (The Final 7話)
すがってた
悪いかよ!
それが僕の常識だったんだ!!
誰も 教えてくれなかったじゃないか!!
今以外の生き方を
誰も与えてくれなかったじゃないか!
知らないことを
どうやって知れっていうんだ!
分かれっていうんだ!!
なんで…!
知らないことも
草摩紅野 (The Final 7話)
分からないことも
これから覚えていけばいい
だから 変わろ
慊人
こんな環境の中に居続けても君は
草摩や絆に食い潰されるばかりで
空っぽのままだ
だから…
今更…
草摩慊人 (The Final 7話)
今更お前がそんなこと言うんだ
変わる? 遅いよ
じゃあなんで最初に
そう言ってくれなかったんだ
なんで最初から僕を
突き放してくれなかったんだ
見捨ててくれなかったんだ
それを 今更…
今になって そんな御託…!
中途半端に僕を救って
中途半端に放り出すような
その 優しさとかってやつが
僕を殺し続けたんだ!
ずっと! ずっと!!
8話
俺も
草摩夾 (The Final 8話)
俺もお前に聞きたいことがあった
この間から
俺の勝手な勘違いなら笑ってくれ
いくらでもバカにしてくれ
お前
お前俺が 好きなのか
嫌な予感的中した
草摩夾 (The Final 8話)
よりによって 俺かよ
お前
母親が好きなんじゃなかったか
あれ嘘か?全部
なしか?
───
そばに いなければよかった
残された時間そばにいたいだとか
なんで願ったりしたんだ
その結果がこれじゃ あんまりだ
言いたくない
知られたくない
認めたくない
だけど こんなのあんまりだ
俺を 好きだと思うお前が
草摩夾 (The Final 8話)
可哀想だ
バカみたいに 可哀想だ
ごめん…
ごめん…!
お前の母親
草摩夾 (The Final 8話)
俺 知ってた
あの日 あの事故の日
近くに立ってて
すぐにわかった
横顔も 髪の色も
昔と変わってなかった
そんなもんいねぇ 死んだ
草摩夾 (The Final 8話)
「お父ちゃんは?」
あんなやついらねぇ!死ね!
あいつだって
俺が死んだ方がいいって思ってんだ!
そりゃあ 寂しいね
本田今日子 (The Final 8話)
職場が近くにあるのだと
草摩夾 (The Final 8話)
その人は言った
度々会いに行った
色々な話をしてくれた
本田今日子自身のこと
本田勝也のこと
そして 透のこと
こういう人間の娘って
どんなやつなんだろう
とか
どんな声で笑ったりするんだろう
とか 思った
しっかりしろよ
草摩夾 (The Final 8話)
俺が 俺が絶対見つけてくるから!
お前は家で待ってろ
絶対助ける 守ってみせる!
男の約束!!
それは 俺が自分で選んで
草摩夾 (The Final 8話)
師匠が買ってくれて
あいつの手に渡っていったものだった
──
知らない
あいつに触られたものなんか
もう俺のものじゃない
あいつ あいつ嫌なやつだ
なんでも持ってて
大事にされてて
なんでそれで人のものまで取るんだ
それでもあいつは嫌なやつだ!
草摩夾 (The Final 8話)
悪いやつなんだ!!
俺が助けようって思ったのに…!
あいつは
俺よりも恵まれてるくせに
なんでここでまで邪魔するんだ
そうであってほしいんだろ
本田今日子 (The Final 8話)
嫌なやつがいてくれないと
自分が困るんだろ
違うよ
本田今日子 (The Final 8話)
味方だの良いだの悪いだの
下らない
そんなもんにこだわって生きてちゃ
お前が勿体無いよ
お前、せっかくそんな優しくて
良い子なのに
“約束”!
本田今日子 (The Final 8話)
ツケね
それきりだった
草摩夾 (The Final 8話)
裏切られたような寂しさ
助けられなかった恥ずかしさ
横取りされたような悔しさ
拗ねた気持ちが
もう一度会うのを避け続けた
そして
あの日再会した
声をかけようか迷ってて
そしたら
視界に物凄いスピードで車が
あ、やばい、助けなきゃって
腕を引っ張って抱きとめれば
でも、俺は人間じゃないから
抱きとめたりしたら
猫になって
人間じゃないって
ばれるから
見殺しに…した……
俺が抱きとめてさえいれば
草摩夾 (The Final 8話)
あんな高く 吹っ飛んで
痛い思いしなくて済んだ
絶対死なずに済んでた
なのに俺は
俺とお前の母親の命を秤にかけて
俺をとった
俺を護った
命よりも 命よりも…!
こんな自分…
こんな自分 大嫌いなのに
憎くて憎くていなくなればいい
消えてしまえばいいって思うくせに
最後はいつも自分を護る
甘やかして逃げる
草摩夾 (The Final 8話)
いつも
いつも いつも
今も
怖くてお前の顔も見れない
俺の母親も
草摩夾 (The Final 8話)
吹っ飛んで 死んだ
車じゃ…なかったけど
こんな俺を生んで申し訳ないって
こんな俺が可哀想だ
つらくて そばいいられないって
ひどく泣いてた次の日
死んだ
いい加減にしろよ
草摩夾 (The Final 8話)
認めろよ もう
分かってるから逃げてきたんだろ
認めろよ
もう
───
全部 俺のせいなんだ
俺が 奪った
俺が死なせたんだ
「寂しいね」
草摩夾 (The Final 8話)
泣き出しそうだったんだ
本当は
言葉の意味こそまだ分からなかったけど
許されたような気がしたから
自分の存在が
赤の他人に
師匠以外に
草摩夾 (The Final 8話)
そんな人間いないと思ってた
毎日窺うような目で見てた母
憎悪を叩きつける父
蔑み見下す草摩のやつら
そんな否定の中で生きてきたから
希望のような光に思えた
透にも本当は 会ってみたいと思った
草摩夾 (The Final 8話)
思っただけで
実際本人を見に行ったのは
あの日 あの時だけだったけど
寂しそうで嫌だった
幸せであってほしいと願った
あの人や あの子の過ごす日々は
幸せに護られていてほしかった
子ども心に
寂しくあってほしくなかった
だからずっと気になった
今日は寂しくないだろうか
今日は笑っているだろうか
胸のどこかで
なにか咲いたみたいに気になって
初めて自分から会いに行ったんだ
あの日 あんな結果に終わったけど
再会しても あんな形で終わったけど
許さないって 言ってた
草摩夾 (The Final 8話)
お前の母親 血だまりの中で
立ってる俺に気付いて
俺に 許さないって
たしかに そう聞こえた
俺は 何もできなくなった
頭の中 真っ白になって
ぐちゃぐちゃになって
その場から逃げ出してた
そのまま師匠に連れられて
山で過ごした
闇の中で立ち止まっていただけ
師匠は俺を生かそうとしてくれた
でも俺は
草摩夾 (The Final 8話)
どうしても自分のしたことが許せなくて
もう今度こそ
自分が死ぬしかない気がして
だから 俺のせいじゃない
あいつの 由希のせいだ
俺の希望は全部あいつが
鼠憑きが奪ったんだ
由希のせいだって
そうやってとにかく悪いやつを作り上げて
責任を全部背負ってもらった
根拠なんかない
そんなもん必要ない
悪いやつでいてくれればいい
不都合なことは悪いやつのせいにして
自分は忘れたふりできればいい
そいつをただ憎んでればいい
そうして 俺は
お前の母親を見殺しにした記憶を
消した
自分でも驚いた ずっと忘れてたなんて
草摩夾 (The Final 8話)
この間 お前の部屋で帽子を見た時
あの時のことを思い出した
都合よく記憶を消して
悪い存在のそいつに責任転嫁だ
俺 ガキの頃からそうやって
自分を護ることだけは上手いんだ
最低だろ
晴れて元気になれた俺は
草摩夾 (The Final 8話)
山を下りて憎しみを糧に生きることにした
師匠は悲しそうに笑っていた
戻ると 行方を暗ましていたこと
父親から聞かされていた慊人に呼び出され
咎められ 言い争いになって
賭けをした
「高校を卒業するまでに
本当に由希に勝てたなら
もうバケモノ呼ばわりしない
十二支の仲間にも入れてあげる」
内心嬉しかったのかもしれない
そう言われて
仲間に入れるからじゃない
憎む理由が増えたから
だからその足であいつのもとへ向かった
まさかその後
お前に会うなんて思わなかった
お前
草摩夾 (The Final 8話)
俺を許せるか?
逃げ出した俺を
逃げてばっかの俺を
ずっと気付かないふりして
何も言わなかった俺を
───
腹立たしさや恐れもあった
深く関わるつもりじゃなかった
好きになるつもりじゃなかった
なかったのに…
許しません
本田透 (The Final 8話)
そう言わないと
いけないんですか
許さないとか 許すとか
そんな選択しかもう
私には残されていないんですか
お母さんがそんなこと
本田透 (The Final 8話)
許さないとか言うなんて
信じられません
信じられないけれど
でももし
もしも本当にそう言ったのだとしたら
わ、私…
私は
お母さんに反抗せざるを得ません!
だって
だってそれでもどうしたって
夾くんを好きだって思う私は
認めてもらえないんですか!!
そんなん…幻滅だ…
草摩夾 (The Final 8話)
俺 自分のことばっかりだったな
草摩夾 (The Final 8話)
自分の懺悔ばっかして
言いたいことだけ言って
お前の気持ちなんて無視した
そして
そのまま謝れないまま
二度と会えなくなることも
この世では起こり得るんだって
知ってたはずなのに
似たようなことを繰り返すなら
それは 知らなかったのと
変わらないよな